アイツと、読書と、音楽と

ひと知れず されど誇らかに書け

「氷の海のガレオン/オルタ」木地雅映子

あの頃の私に読ませてあげたかった。

自分に似た生きにくい子供が出てくる作品と出会うと、そんな風に思っていた。しかし、果たして当事者であった頃の自分は、客観的に本を読むことで自分を宥めることが出来ただろうか。

もしかしたら今なのかもしれない。私の中で物陰からこっそりと大人になった私を見つめている子供時代の私に、よく頑張った、よく生き抜いた、と声をかけてあげることができるのは。木地雅映子の描く子供に自分自身を重ねる人は、そう多くはないかもしれない。しかし、もし重ねることができれば、それはその人にとって何らかの救いとなるはず。

解説は藤田香織。私が信頼する書評家のひとり。