アイツと、読書と、音楽と

ひと知れず されど誇らかに書け

「取り扱い注意」佐藤正午

ジグソーパズルのようである。

まず四隅を見つける。その周辺を固めていく。じわじわと内側へ。四苦八苦の後に、突然バタバタと隙間にパズルがはまっていく。その爽快感!

佐藤正午は、作家が好む作家だと聞く。私の記憶が確かなら、宮部みゆき伊坂幸太郎が彼のファンであることを公言している。

主人公は女に不自由しない男、鮎川英雄。鮎川くんの叔父であり、現実にこういう人がいたら困るけど、小説の登場人物としては最高に魅力的なユースケ。この二人が軸。そしてその周辺に存在する癖の強い女達。

ジグソーパズルのようだと最初に申し上げたが、読み始めにまず引き込まれる。導入部分がとにかく上手い。そこからの物語の組み立て方が複雑なのに、グイグイ読ませるのはさすが技巧派。そしてラストに向けて勢いよくハマるパズルの欠片たち。伊坂幸太郎作品についての感想でよく聞く「伏線回収の見事さ」という言葉、その技の遣い手である大先輩がここにいるじゃない!と伊坂ファンなら思うはず。

はぁー、満足した、と文庫を読み終えた先には先日亡くなった北上次郎の解説が待っていて、ホロリ。北上次郎も書いているが「セックスは好意にも勝てない」という言葉には個人的に唸りましたぞ。

ちなみに私の脳内キャストでは、ユースケ叔父さんは岡部たかし一択。