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ひと知れず されど誇らかに書け

忌野清志郎ロックンロールショーファイナル

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え?今頃?と思いながらも、先日放送されたものを観て、自分なりに書いておかなきゃと思った次第。

 

ファイナルという文字が悲しくもあり、それにも増してお疲れさまでしたという気持ちが強くもあり。
2019年5月4日。雨の予報だった。
実際野音の周辺では雨が降ったらしい。
天国在住の皆様方は、今日は晴れの野音を見物をしたいと思ってくれたのだろう。
あらかじめ書いておくが、私は宮本を贔屓としているので、宮本に関する記述のみ詳細となる。

昨年の荒吐以来の再会となるヒトハタウサギ、そして清志郎の愛車が置かれたステージの上は実ににぎやかなものだった。これから始まるステージの豪華さを予感させる機材の数々。
大勢のスタッフ、大勢の立ち見、満員御礼の野音には思い思いのTシャツを着こんださまざまな年齢層の人たちが集まっている。さながら同窓会のような雰囲気。

オープニング映像はおなじみの、清志郎が自転車で野音へやってくる姿。
そしてトップバッターはド派手な三者三様のストーンズスーツに身を包んだ竹中、小暮、高木完
豪華な「ぼくの好きな先生」。
そう、この日はすべてにおいて贅沢なセットリスト。基本的に一組一曲。
だからこそ、誰がいつ何を歌うのか、客席のBPMが常に高い状態のライブだった。

あ、ギターのチューニングを直しにきた人?と思うくらいに曾我部恵一はいつの間にか静かにステージに立った。まったく曾我部と気づかせないほど。しかし甲州街道を歌い始めると、5月なのに秋の風を吹かせにきた。
後半、空をしばらく見つめた瞬間があった。彼の眼には、きっと私たちに見えない誰かの姿が見えたのだろう。

フライングキッズ浜ちゃんと高野寛は二人で「わかってもらえるさ」
清志郎はどんな曲でも難なく歌うので、こうして冷静にじっくり聞くと、難曲っぷりに驚かされることが多々ある。

「みなさんが今考えていること、それはなぜ私がここに立っているか」
といって会場を一気に沸かせた清水みっちゃん。しかしほんとに沸かせたのは「帰れない二人」を最初は陽水、後半は清志郎と歌い分けた時。その時にはもう、誰も「なぜ?」などと思う人はいなかったと思う。彼女の清志郎の真似から感じるリスペクト、これはぜひ生で感じてほしい。
私は矢野顕子と二人で「ひとつだけ」を歌った渾身のみっちゃんを観たことがある。絶品だった。
舞台袖、客席から丸見えの場所で矢野顕子が楽しそうにずーっと見ていたことも記しておく。

真心の「よごれた顔でこんにちは」も難曲。
それを歌いなれた顔をして二人は歌っていた。その表情がとてもよかった。

ロックンロールショー、ある意味前半部分の一番の驚きは、のんと矢野顕子のステージだった。何が驚きかって、矢野顕子が完全にのんのサポートに徹したこと。
この日、数組だけが清志郎が作っていない歌を歌った。そのうちの一組がこの「わたしはベイベー」。
のんの持ち歌であり、矢野顕子提供曲。そして清志郎が歌詞に出てくる。
非常にのんちゃん自身と重なる楽曲であり、矢野顕子のサポートが効きまくったステージだった。

 

さて、ここからタイマーズ編。
懐かしのスタイルに身を包んだ男たち。そこに最初にお声がかかったのは宮城の星、クドカン
このあたりから、あぁ、カメラは入っているけれど、こっからは放送されませんよね、という共通認識が全体に生まれた。クドカンというより暴動。実は2曲歌ってます。
そしてこの曲にこの人選、グッジョブと思った「原発賛成音頭」怒髪天の増子の兄貴。改めてタイマーズはまるっと放送カットということが兄貴の口から発表。
(地上波では完全カットだったものの、フジテレビNEXTでは最初から最後までしっかり放送された。)
Leyona(きっちりタイマーズスタイル)のデイドリームビリーバーからの、「音楽に政治を持ち込むな!」という言葉から始まったTOSHI-LOWのあこがれの北朝鮮、そのあと語った言葉がよかった。
そうさ、「それならお前が歌え!」ごもっとも!有言実行の男TOSHI-LOW、裸に半纏、さらしなしのすごいやつ。

さて、(俺が)お待ちかねのRC編はじまりはじまり。RCサクセションが聞こえる♪
今回のロックンロールショー、このCHABOが凄かった。清志郎がいなくなってからのCHABOを追いかけている私だが、この日のCHABOにはいつも以上に驚かされた。CHABOが出てきた瞬間から、一気に空気が変わった。
一組一組、非常に丁寧な心のこもった呼び込みが沁みまくる。
安定のCHABO BAND、何があってもどーんと来いの布陣だ。
よオ-こそで客席の温度を一気に上げ、CHABOさんが大事に大事に歌う「お墓」へ。この選曲は実にCHABOさんらしい。
じんわりしたところで、RC編のトップバッター、ギター持たなきゃ戸越銀座の不良少年(笑)「一番古い友達かもしれない」Char。
だってさ、これはロックンロールショー!ロックショー♪
CHABOとCharの並び、ほんと日本の宝。
最後にギターをポーンとスタッフに投げるところまでが、Char。

次の呼び出しの前に、CHABOが「清志郎、そろそろ戻ってこいよ」と自然な口調で言ったところで完全に会場全体がホロり。
ド派手に登場したのは、清志郎のガールフレンドの一人、夏木マリ姉さん!
わかってらっしゃる。この会での自分の役割をよーくわかっていらっしゃる!
こうでなくちゃ、の見本のようなお衣装にステージ。
客席と自分を自撮りして、撮ったスマホをスタッフにポイと投げ渡すところまでかっこいい。
日本の有名なロックンロール「上を向いて歩こう」を清志郎バージョンとして、忠実に。

来てくれないと思っていたけど、快諾してくれた。ぜひこの曲を歌ってほしかったとの紹介。なんとこの曲を!「いい事ばかりはありゃしない」のハリー。武州三多摩
日本の宝、その2。ハリーの最後の笑みにグッとくる。また一緒にやろう、とCHABOさん。
この曲では片山さんのテナーサックスを梅津さんが…。泣いたわ。

さて、私はCHABOのファンであり、エレカシの、宮本のファンでもある。
待ちに待ったその時、CHABOはこう言った、
「RC、スライダーズは東京、武州三多摩。彼らは東京、赤羽だ。(客席、わーーーーっ)
どんなにバンドが大きくなっても、赤羽のにおいが消えない、そんなバンドが俺は好きなんだ。紹介するぜ。よく来てくれた。忙しいのによく来てくれた。エビバデ、エビバデ。エレファントカシマシ(ここのイントネーション、重要)から、宮本浩次
この言葉だけで今日来た甲斐があったってもんだ。
「こんにちはーーー!」と大きく手を振り上げながら、さっそくマイクスタンドを倒す宮本は
CHABOの前ではいつも以上に少年になる。
曲は昨年の荒吐再び「君が僕を知ってる」。
イントロが流れる。宮本下を向きながら頭を抱え込む。
CHABOはイントロを弾く手を止めることなく静かに宮本に歩み寄る。Dr.kyOnが微笑む。
宮本がそばに歩み寄ったCHABOに「よろしくお願いします」と言う。
CHABOがバンドメンバーにOKのサインを出す。梅津さん微笑む。
この4行分を、私は何度も何度も繰り返し観た。大好きなシーンだ。
生で観た当日は、ちょっと大丈夫かな?と心配したが、テレビの映像で見返すと、実に宮本らしい緊張感のある良いシーンであった。
この姿があったからこそ「今までしてきた 悪い事だけで」という歌いだしを聴いた会場はどよめいたのだと思う。まっすぐないい声だった。終始丁寧な歌い方だった。荒吐ですっぽ抜けた「コーヒーを僕に」のくだり、今回は忘れなかった。
しかし別な部分での盛大な歌詞間違えの後、「離れ離れになんかなれないさ」で目が泳ぎ、そのあとのCHABOのギターソロの時、後ろにまわりこんでの苦悶の表情、七転八倒の姿をCHABOは実に優しく微笑んで見ていたし、カメラもしっかりととらえていた。
押さえる股間の映像が、股間中心で大写しになったのは笑ったが、この一曲に込めた宮本の熱は十二分に伝わった。マイクスタンドを3度も倒すほどの動き、天国在住のみなさんの酒がすすんだこと間違いない。
宮本がはけていく際、CHABOさんが頭を2度ポンポンと叩いた。LOVE&PEACE

嵐が過ぎ去り、佐藤タイジの突き抜けるスローバラードがまた一気に空気を変えた。
スローバラードは、声のでかい男に似合う。ど名曲をどストレートに歌っていた。
何度聴いても凄まじくいい曲だ。
ただ一人、リハをやっておらず生意気だった(笑)せっちゃんのドカドカうるさいは、まるで持ち歌のようにハマりきっていた。
「CHABOがよろしくしてるぜ」と歌詞を変え、そこですかさずCHABOは「梅津ーっ」と指差す。
素敵よ。こういうくだりは永遠に続いていってほしい。

ラストは三宅さんオーガナイズの清志郎ソロ編。
いきなりの鮎川誠で「ROCK ME BABY」。おいおい、レジェンドだらけじゃないか、とまたもや震え。
ここまでくると、感覚がだんだんおかしくなってくる。夢か現実か?
山崎まさよしの「愛と平和」などは完全に夢心地。
それを逆に凄すぎて現実にぐーーーっと引き戻してくれたのは、金子マリの「恩赦」。
素晴らしかった。個人的には令和一発目のライブであったし、聴きたい曲№1。それを金子マリが!下北のジャニスをついに生で聴くことができて大満足。
そしてBEGINの「雑踏」。実はBEGINと清志郎というのが、自分の中では一番結びついていなかったのだが、謝る。ごめんなさい。ものすごくよかった。
三宅さんの「ボスのSOUL」は、この日一番の切なさだった。
毎日がブランニューデイで、ソロ編も終了。

「JUMP」で遠藤ミチロウコスプレのTOSHI-LOW(全力でこれは褒めたい)なども登場し、賑々しく締めくくられようとしたその時、呼ばれて飛び出たのは、革ジャンでキメキメのアイツ、そうキムタクだ。令和ってすごいっすね。木村拓哉が歌ってるよ。
後日息子と一緒にこのライブの地上波を観たのだが、やっぱりキムタク、かっけーなーと息子がしみじみ言っていた。この日のキムタクは、実に楽しそうだった。だからオールオッケーだと思う。

出演者のほとんどがステージに再登場しての雨上がり。
宮本のマイクにはハリーと鮎川誠という、現実とは全く思えない絵面。
なにせここまで3時間なので、こちらの感覚も相当やられているわけで。
RCサクセションで踊ってろ!と若かりし頃毒づいた彼が、今日はなんだか照れたように、恐縮しながら歌っている、しかもキムタクと同じ舞台で。人生って不思議なものですね。

オーラスのアンコール、登場したのはCHABO、三宅さん、そして梅津さん。
なんと二人のギターで梅津さんが歌う「多摩蘭坂」。
こんなに美しく切なく愛情がこもった「多摩蘭坂」は反則だ。
この演奏、この歌唱を忘れることは一生ないだろう。清志郎ロックンロールショーファイナルにこれほどふさわしいものはないと思った。
CHABOが清志郎の家族に向かっていった、お父さん凄いなぁ、という言葉。
CHABOにしか言えないあったかい、とてもあったかい言葉だと思った。「俺たちの清志郎」を家族へそっとかえしたような、そんな優しさかな。

最高のロックンロールショーをありがとう。

 

<セットリスト>
オープニング映像:忌野清志郎野音にやって来る!
M01 僕の好きな先生/竹中直人+木暮晋也&高木完
M02 甲州街道はもう秋なのさ/曽我部恵一
M03 わかってもらえるさ /浜崎貴司FLYING KIDS)×高野寛
M04 帰れない二人/清水ミチコ
M05 よごれた顔でこんにちは/真心ブラザーズ
M06 わたしはベイべー/矢野顕子×のん
M07 タイマーズのテーマ~偽善者/宮藤官九郎
M08 原発賛成音頭/増子直純怒髪天
M09 デイ・ドリーム・ビリーバー/Leyona
M10 あこがれの北朝鮮~LONG TIME A GO/TOSHI-LOWBRAHMAN/OAU)
M11 タイマーズのテーマ /TOSHI-LOWBRAHMAN/OAU) / 宮藤官九郎 /
増子直純怒髪天) / Leyona
M12 よォーこそ~お墓/仲井戸麗市
M13 ロックン・ロール・ショー/Char
M14 上を向いて歩こう夏木マリ
M15 いい事ばかりはありゃしない/村越弘明
M16 君が僕を知ってる/宮本浩次
M17 スローバラード/佐藤タイジシアターブルック
M18 ドカドカうるさいR&Rバンド/斉藤和義
M19 ROCK ME BABY/鮎川誠(シーナ&ロケッツ
M20 愛と平和/山崎まさよし
M21 恩赦/金子マリ
M22 雑踏/BEGIN
M23 ボスのSOUL/三宅伸治
M24 毎日がブランニューデイ/仲井戸麗市
M25 JUMP/金子マリ / 斉藤和義 / TOSHI-LOWBRAHMAN/OAU)
/ BEGIN / 山崎まさよし / 三宅伸治 / 仲井戸麗市 / 木村拓哉=シークレット・ゲスト
Encore
EC1 雨あがりの夜空に/全員
EC2 多摩蘭坂梅津和時×仲井戸麗市×三宅伸治
Dinamic Live
M01 ヒッピーに捧ぐ/忌野清志郎
M02毎日がブランニューデイ/忌野清志郎