アイツと、読書と、音楽と

ひと知れず されど誇らかに書け

横山秀夫「ノースライト」

 

ノースライト

ノースライト

 

「警察小説ではない」横山秀夫との対峙。
一文一文に横山氏の全力が感じられる。
それが読む側の重圧にならないのは、ひとえに横山氏の技量によるもの。

 

建築士が主役。一級建築士、しかし彼の生い立ちにも、成人してからの人生にもいくつもの山や谷があった。この描き方が実に丁寧。
そこには創作者としての「作家=横山秀夫」本人のイメージが重なる。


家を考えるということは、おのずと家族を考えることに通じる。
主人公の本当に求める「家」とは、いったいどんなものなのか。

 

作中、ある画家の描いた一枚の絵葉書に書いてあった文章。
その言葉こそ、横山秀夫が書き続ける意味なのではないかと思った。

 

六年もの歳月をかけて存分に練り上げられた作品。
その分読み応えあり。時間をみつけて、一頁一頁を味わいながら読んでほしい。

 

ちなみに、私はよく俳優を勝手に想定して、あて読みをする。
今回は主人公の青瀬を阿部サダヲ、建築事務所オーナーの岡嶋を皆川猿時として読んだ。
この二人、そろそろこういう役をやってもいい頃合いだと思う。

 

様々な謎が固い結び目をほぐすように、徐々に解き明かされていく。
こういうミステリーもあるんだな。
おすすめです。

2019年82冊目読了。