アイツと、読書と、音楽と

ひと知れず されど誇らかに書け

岡村ちゃんデビュー記念日おめでとう!懐かしい企画を発掘しました

本日我らが岡村ちゃんのデビュー記念日でございます。元気に活動してくれるということが、当たり前のことじゃないと痛感させられた2023年でした。

2016年、デビュー30周年の際に我が岡村人生で一番張り切っておこなったアンケート。「岡村ちゃんなら、これちょっと聴いてみて!」を発掘しましたので、デビュー記念日を祝って蔵出ししたいと思います。

Twitter、そしてHMV池袋・立川店、岡村ちゃん担当でお馴染みの本間店長にもご協力いただき、店舗にアンケート用紙を置かせていただいての集計でした。

当時ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。

以下、当時のブログに載せた文章そのまま貼り付けます。

 

 

 

今年(2016年)の6月に始まりましたこの企画、ついに結果発表の時がきました。
岡村ちゃんなら、これちょっと聴いてみて!」
岡村ファン(いわゆるベイベ)が選んだ岡村ちゃん10選。
最近ファンになったあなた、これからファンになるであろうあなたに捧げる企画でございます。
と同時に、昔好きだったけれどしばらく聴いていなくて、今からDATEに行くのはちょっと気が
ひける…、というおそらく私と同年代のあなた!以下の結果を見て頂ければ、きっと安心して
参戦できると思います。
そしてまた、すでに沼にズブズブとはまり込んだ自分自身の、岡村曲って素晴らしい!
と勝手に再確認する場でもございました。

半年間温めた卵ですから、ここで巣立たせるのは嬉しいような、寂しいような…。
しかし、今日こそが岡村ちゃんのデビュー30周年記念のまさにその日です。
どどどーーーーーんと発表いたします!

得票総数、なんと3,052票。
310人の岡村ファンが選んだ、ご新規ファンにすすめたい岡村曲はこれだ!


1位 あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう    186票
1990/10/10 発売 EPIC / SONY RECORDS
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸

オリジナルVer
収録作品 : Single / 家庭教師 / OH!ベスト / 岡村ちゃん大百科
ホームシックVersion
収録作品 : Single / 岡村ちゃん大百科
エチケット・パープルVer
収録作品 : エチケット(パープル)


2位 だいすき     162票
1988/11/02 発売 EPIC / SONY RECORDS
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸

オリジナルVer
収録作品 : Single / 靖幸 / 早熟 / OH!ベスト / 岡村ちゃん大百科
エチケット・ピンクVer
収録作品 : エチケット(ピンクジャケット)
エチケット・パープルVer
収録作品 : エチケット(パープルジャケット)


3位  愛はおしゃれじゃない  135票
2014/04/02 発売 V4 Record
作詞 : 小出祐介Base Ball Bear)/ 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸
Vocal : 岡村靖幸小出祐介
収録作品 :幸福


4位 イケナイコトカイ  123票
1988/02/01 発売 EPIC / SONY RECORDS
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸・西平 彰

オリジナルVer
収録作品 : Single / DATE / 早熟 / OH!ベスト / 岡村ちゃん大百科
Live Version
映像作品 「LIVE 家庭教師 '91」 と同一。
収録作品 : Single(ターザンボーイ)/ 岡村ちゃん大百科


5位  ビバナミダ  121票
2013/10/02 発売 V4 Record
作詞 : 岡村靖幸西寺郷太NONA REEVES)/ 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸

テレビアニメ 「スペース☆ダンディ」 主題歌(2014年1月 放送開始)
スペース☆ダンディ盤」は2014/01/29 発売 V4 Record
収録作品:幸福


6位  Out of Blue     111票
1986/12/01 発売 EPIC / SONY RECORDS(まさに30年前の今日発売されたデビュー曲!)
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸・西平 彰

オリジナルVer
収録作品 : Single / yellow / 岡村ちゃん大百科
ベストアルバムVer
オリジナルVerのボーカルパートのみを録り直したもの。
収録作品 : 早熟 / OH!ベスト
Live Version
映像作品 「LoveφSex' 88 DATE」 収録のライブ音源と同一。
収録作品 : Single(ラブ タンバリン)/ 岡村ちゃん大百科


6位 カルアミルク        111票
1990/12/01 発売 EPIC / SONY RECORDS
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸

オリジナルVer
収録作品 : Single / 家庭教師 / OH!ベスト / 岡村ちゃん大百科
君も歌ってみよう編
収録作品 : Single
Live Version
収録作品 : Single(パラシュート★ガール)/ 岡村ちゃん大百科
エチケット・ピンクVer
収録作品 : エチケット(ピンクジャケット)


7位 ステップ UP↑    97票
1990/11/16 発売 EPIC / SONY RECORDS アルバム「家庭教師」収録
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸


8位 どぉなっちゃってんだよ     91票
1990/07/21 発売 EPIC / SONY RECORDS
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸

オリジナルVer
収録作品 : Single / 家庭教師 / OH!ベスト / 岡村ちゃん大百科
Adult Only Mix
収録作品 : Single / 岡村ちゃん大百科
エチケット・パープルVer
収録作品 : エチケット(パープルジャケット)


9位 いじわる     84票
1988/03/21 発売 EPIC / SONY RECORDS アルバム「DATE」収録
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸・西平 彰

エチケット・ピンクVer
収録作品 : エチケット(ピンクジャケット)


10位 彼氏になって優しくなって   82票
2014/11/12 発売 V4 Record
作詞 : 岡村靖幸 / 作曲 : 岡村靖幸 / 編曲 : 岡村靖幸

アルバム「幸福」デラックスエディション、ボーナス映像としてMV収録
収録作品:幸福


10位以下はこのようになっております。

11    青年14歳                80票
12    できるだけ純情でいたい        75票
13    真夜中のサイクリング        74票
14    ラブメッセージ         71票
15    聖書(バイブル)                69票
16    ヘアー                        54票
17    Lion Heart              49票
18    19 (nineteen)            48票
19    友人のふり              45票
20    家庭教師                43票

21    新時代思想              42票
22    Super Girl                40票
22    (E)na                   40票
23    ペンション                39票
23    モン-シロ                39票
24    パラシュート★ガール        30票
24    だいすき(パープル)        30票
25    はっきりもっと勇敢になって  29票
26    ミラクルジャンプ        28票
27    ラブ タンバリン          26票
27    ぶーしゃかLOOP          26票
28    Vegetable                25票
28    チャーム ポイント          25票
28    Dog Days                25票
29    Young oh! oh!            23票
29    ハレンチ                23票
30    どぉなっちゃってんだよ(パープル)    22票

※今回、バージョン違いで書いてきていただいたものは、きっちりと分けました。
しかし念のため、バージョン違いの同一楽曲の得票数も計算いたしましたところ
上位10位に変動はありませんでしたので、敢えてバージョン違いでの得票数を
採用させていただきましたこと、ご了承ください。

「春風亭一之輔のおもしろ落語入門」

 

始まりは神田伯山の伯山ティービィーから。

松之丞が六代目神田伯山になった日【全30回】 - YouTube

松之丞時代からラジオを聴いていて、一度独演会にも行きました。講談に興味を持つとは、自分でも驚き。当然伯山襲名興行を映した伯山ティービィーも全部観ました。これがまた面白かった。何より寄席の楽屋風景がとてもいい。寄席とはなんとあたたかみのあるところだろう、と思って観ていたら、噺家のイメージとは違うパーマをあてたいまどきのあんちゃんがよく登場することに気がつきました。こちらが現在私が推している柳亭小痴楽師匠。

柳亭小痴楽 - 協会員プロフィール|落語芸術協会

一度気になり出すと止まらない。いろいろ検索して動画で落語も聴いてみる。しかし、東北育ちの私に威勢の良い江戸言葉が聞き取れないという落とし穴が!そこからは、ひたすら古今亭志ん朝の落語を聴いてリスニングを鍛える日々。志ん朝が聴き取れれば小痴楽もイケるとふんだ私の目論見は間違っていなかった、そして落語の知識も増えてきたところで生の小痴楽師匠の落語を聴きに行くようになりました。面白い!もっと落語が聴きたい!となり、気づいたらApple musicに春風亭一之輔師匠の落語がたくさん入ってる。これを聴くようになったら、ますます面白い!

ということで、こんな落語会にも行きました。

 
 
 
 
 
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A post shared by 佐倉奏 (@seiko3814)

落語って、音源で聴いたり、テレビで観たりするより生で聴くと何倍も面白いんですよね。ライブと一緒。ナマモノです。生きてます。

40代の一之輔師匠、30代の小痴楽師匠、私がばあちゃんになっても、きっとまだ高座に上がっているはず。老後に向けての初期投資として、推しの落語家を増やしていこうと思っています。

そんなわけで図書館の児童書コーナーで見つけたこの一冊。私のような初心者にはピッタリの本。表紙も挿絵も山口晃氏、これだけ見ても楽しめます。

笑点の新レギュラーになった一之輔師匠、年間900席もこなすのに、どこにそんな時間が?と驚くばかりですが、これからますますチケットは取れなくなることでしょう。寄席だ、寄席に行こう!

「シャイロックの子供たち」映画、そして原作本

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自分の作品が映画化される時には、全く関わらないという作家の方も多いと聞きます。自分の手から離れたら、それはもう別の作品だと。しかし、今回の映画、特に主人公について「池井戸先生が“こういう西木もあるんじゃないか”と意見をされたみたいで、自分に近い役を与えて下さった」阿部サダヲがインタビューに答えていたのを読んで俄然原作が気になり始めました。噂によれば、映画と原作のラストも違うらしい。となると、一刻も早く原作を読んでみたくなるじゃないですか!映画を観終わったその日に読み始めた原作、あっという間に翌日読了。

 

まずは映画の感想から。主演阿部サダヲ、主題歌エレファントカシマシという、私にとってダブル推し。お得すぎる。

三菱銀行にお勤めだった池井戸先生が最も得意とする銀行モノ。うちの祖父(元銀行員)の遺言が、銀行員にだけはなるな、だったそうですが、おじいちゃんの遺言を守って良かったよ…、と心の底から思いました。銀行、お金、おっかねぇ(震

ある銀行の支店でおきた現金紛失事件を描くミステリー。これに絡んでくる役者が全員濃い。台詞なんかもういらないんじゃない?顔が全て語ってるでしょ!という面々。特に柄本明VS橋爪功の絵面がたまりませんでした。これだけの役者が揃うと、観客の反応も明らかに良いのです。サダヲファンでもなく、玉森ファンでもなく、エレカシファンでもないであろう、明らかに池井戸作品ファンとお見受けする年配の方々の笑いや驚きが共鳴するかのように全体に広がるので、若干応援上映的な味わいがありました。池井戸作品らしいラストで「安定感!」となりながら聴くエレカシの主題歌は、宮本、天才か?とまたまた思うほどに映画と一体化していて素晴らしかったし、誇らしかった。登場人物全てに歌詞がじわじわと当てはまっていくのが凄い。すなわち生きる!宮本、主題歌上手。

yes. I. do

yes. I. do

 

そして問題の原作ですよ。

映画を観た人は読んだ方がいいし、原作しか知らない人は映画を観た方がいい!まず映画の登場人物たちのバックグラウンドがよくわかります。特に主人公西木が今の部署に配属されるまでの経緯は知っておいた方がより面白い。また、短編かと思わせておいて実は次々と交差していく人間関係。ページをめくる手が止まりません。そして噂以上に映画と全然違う結末!映画の脚本家、凄すぎる…。そして池井戸先生、脚本協力として参加しているそうです。納得!ひと作品で二度美味しいとは、嬉しい限り。原作が面白い場合、映画化され、しかも映画オリジナルの登場人物なんか出てきた日には、余計なことをしてくれたもんだ…、と怒りで震えることが多々ございますが、これは映画化大成功ではないでしょうか。むしろオリジナルキャストの柄本明が重要!

ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊

と池井戸先生もコメントを出していますが、確かにこの作品を産み出して以降発表された作品のあらゆる要素がギュッと詰まっている感じがします。

不安定な要素の多い生活を送っている今、池井戸作品の持つ安定感が求められるのでは。それに応えるべく変化した映画のストーリーなのかもしれません。楽しませていただきました。

 

映画をご覧になった方は、ぜひこちらの記事も!

泣いて笑ってシャイロック | 文藝春秋 電子版

 

 

映画「エゴイスト」、そして原作本を読んで

映画館で予告を観た時から、絶対観ようと決めていた。その時点では、純粋で単純な同性愛の恋愛映画だと思っていた。しかし、心に引っかかったのが、ほぼメイクなしの阿川佐和子の姿だった。鈴木亮平宮沢氷魚、長身の二人に挟まれ、小柄な阿川佐和子の存在感が、いつも以上に強く感じられた。とにかく阿川佐和子が気になった。

 

公開と同時に映画を観て、10日経つ。この映画への想いは強くなる一方だ。フライヤーに使われた写真は鈴木亮平宮沢氷魚の美しいキスシーン。実際映画の中でも、前半は二人が愛し合うシーンでいっぱいだ。鈴木亮平のゲイの男性としての仕草はとても自然。途中ある曲を歌うシーンがあるのだが、選曲が見事。中でも友人達と語り合う場面が特に好きだ。私もその仲間に入れて欲しい、Wの悲劇の話を一緒にしたい!と思った。そして宮沢氷魚の笑顔の美しさは、もはや常軌を逸している。予告からしてすでに、恋をしている人の、その恋が溢れてしまっている表情が美しすぎて儚かった。

 

まだこの原作を読んでいない、映画も観ていない方もこのブログを読むと仮定して、ネタバレはこの辺までにしておく。しかしこの「エゴイスト」という作品における母親という存在、これがどれほど大きな意味を持つか、なぜ阿川佐和子をキャスティングしたか。実に見事なキャスティングだったと思う。このことだけは書いておきたい。

 

映画と原作本の内容は多少の違いがある。しかし、原作において一番大事な言葉が、しっかりと映画で語られている。映画と原作に共通しているそのいくつかの台詞、これこそが「エゴイスト」の根幹である。特に阿川佐和子演じる母の言葉に私は赤線を引いておきたい。

 

エゴ=悪であると思って生きてきた、私。この映画、そして原作本を読んで、その当たり前だと思っていたイコールが私の中で崩れた。これが崩れることってあるんだ、と驚いている。原作者の高山真氏が、もうこの世にいないことが悔やまれてならない。この映画の感想をぜひ聞いてみたかった。繊細で誠実で知性ある文章を書く人だ。そして、文庫のあとがきの鈴木亮平の文章もまた、知性があり、誠実そのものである。

 

映画も原作もどちらも強く強くおすすめしたい。

映画『エゴイスト』オフィシャルサイト 2023年2/10公開

 

 

 

 

「取り扱い注意」佐藤正午

ジグソーパズルのようである。

まず四隅を見つける。その周辺を固めていく。じわじわと内側へ。四苦八苦の後に、突然バタバタと隙間にパズルがはまっていく。その爽快感!

佐藤正午は、作家が好む作家だと聞く。私の記憶が確かなら、宮部みゆき伊坂幸太郎が彼のファンであることを公言している。

主人公は女に不自由しない男、鮎川英雄。鮎川くんの叔父であり、現実にこういう人がいたら困るけど、小説の登場人物としては最高に魅力的なユースケ。この二人が軸。そしてその周辺に存在する癖の強い女達。

ジグソーパズルのようだと最初に申し上げたが、読み始めにまず引き込まれる。導入部分がとにかく上手い。そこからの物語の組み立て方が複雑なのに、グイグイ読ませるのはさすが技巧派。そしてラストに向けて勢いよくハマるパズルの欠片たち。伊坂幸太郎作品についての感想でよく聞く「伏線回収の見事さ」という言葉、その技の遣い手である大先輩がここにいるじゃない!と伊坂ファンなら思うはず。

はぁー、満足した、と文庫を読み終えた先には先日亡くなった北上次郎の解説が待っていて、ホロリ。北上次郎も書いているが「セックスは好意にも勝てない」という言葉には個人的に唸りましたぞ。

ちなみに私の脳内キャストでは、ユースケ叔父さんは岡部たかし一択。

 



 

「シーソーモンスター」伊坂幸太郎

文芸誌「小説BOC』の創刊にあたり、8組の作家によって紡がれた「螺旋プロジェクト」の一作。

 

というのは、読後知った情報。このことを知らず単体で読んでも面白さは保証する。

伊坂幸太郎が描くのは昭和後期、いわゆるバブル期、そして近未来の二作。一見繋がりが薄いようでいて、そこは伊坂作品らしく、綺麗に重要箇所で繋がっていく。

ひとつはすでに私達が経験した時代、もうひとつはもしかして似たようなことを経験しそうな時代。どちらがいいのか、何が悪いのか、何が悪かったのか。提示される問題は山積みだ。

相変わらず伊坂作品には強い女性が登場する。私はこの女性たちに会いたくて伊坂作品を読む。そして我が街仙台を舞台風景として頭の中で描くことができるのも嬉しい。

 

螺旋シリーズは、あるルールの元で繋がっているらしい。澤田瞳子吉田篤弘も参加しているこのプロジェクト、今さらながら、俄然興味がわいてきた。

 

近未来に出てくる中尊寺さん、私は森山未來であて読みしたが、さてどうだろう?我ながらいい線いってると思う。

 

 

 

 

「氷の海のガレオン/オルタ」木地雅映子

あの頃の私に読ませてあげたかった。

自分に似た生きにくい子供が出てくる作品と出会うと、そんな風に思っていた。しかし、果たして当事者であった頃の自分は、客観的に本を読むことで自分を宥めることが出来ただろうか。

もしかしたら今なのかもしれない。私の中で物陰からこっそりと大人になった私を見つめている子供時代の私に、よく頑張った、よく生き抜いた、と声をかけてあげることができるのは。木地雅映子の描く子供に自分自身を重ねる人は、そう多くはないかもしれない。しかし、もし重ねることができれば、それはその人にとって何らかの救いとなるはず。

解説は藤田香織。私が信頼する書評家のひとり。