「オハラ☆ブレイク'19夏」
宮本浩次ひとり会(仮称)には、起承転結のすべてが詰まっていた。
起承転結それぞれの線をどこでひくのかは全くわからない。わからないけれど、間違いなくその要素は全部あった。
最終的に、観ている側が受け取ったものは巨大だった。
大きな重たい玉手箱をもらって帰ってきて、その封はまだ開けていない。いつ開けようかなとタイミングをはかっているところだ。もしかして、ずっと開けないで大事にしまい続けるかも。
オハラ☆ブレイクは、数あるフェスの中で、一番行ってみたいものだった。
一昨年のオハラでの宮本ひとり会の断片をテレビで観て、「これは絶対見逃したらダメなやつ!」と、その機会を虎視眈々と狙っていた。
2019年8月、その日は案外早くやってきた。
猪苗代湖は数日前から雨の予報。
七夕野音で大活躍したポンチョやらなにやらをリュックに詰め、単身猪苗代へ。
初めてのオハラ、長い一日の始まりだ。
お天気はいい感じの曇り空。何より猪苗代湖周辺が松林のため、日陰がいたるところにあり、また日よけの大きなテントもはられているため、直射日光を避けることができて過ごしやすい。
現地で、私のエレカシ好きに拍車をかけてくれた大先輩と、全国どこのライブも彼女に聞けばなんでもわかるという百戦錬磨の友人に会い、これでもう大船に乗ったも同然。
オハラ最終日、私の予定は、田島さん→ブラフ団→元春先生→宮本さん。
田島さんに間に合うようにと思って来たら、当の田島さんがまさかの大渋滞に巻き込まれ間に合わず。
内田勘太郎さんも体調を崩しご欠席。
その代わりと言ってはなんだが、ブラフ団のステージに、完全にプライベートで来ていた菅田将暉が登場。
しかも一曲歌うというサプライズ。
まったりと椅子に座って聴いていた人たちは立ち上がり、おのおのステージ周辺に散らばってのんびりしていた人たちもわらわらと集合。菅田将暉の歌声は野外によく似合っていた。
佐野元春先生は、きっちりかっちりバンド編成でご登場。
私は軽く数枚のアルバムを聴いていた浅瀬でパシャパシャやっている程度の人間なので、アレンジされていると、どの曲かピンとくるまで時間がかかる。人はそれを老化と呼ぶらしい。
ということで、数分後に「あー!あれか!」を繰り返しながら聴いていた。
明らかにここは日本じゃないんじゃないの?という風を吹かせまくっての最高にオトナな1時間。
何がかっこいいって、曲のラスト、ジャーンジャン的な部分(表現力の欠如)を片手をほんのちょっと、角度として10度程度動かして指示するところ。私の周りの人、みんな真似していた。
ちなみにオハラのメインステージは、かなり高めに出来ているので、どこからでも見やすい。がっついて見に行かずとも十分見えるのがありがたい。
ということで、元春先生ステージから早くも前方に押し気味となっていた場所から早々に離脱して休息をとりつつ、その時を待つ。時は夕暮れ。なんとなく涼しい風も吹いてきた。
さて、(私の)メイン、宮本登場。
まず、そのいでたちに驚かされる。
まずはインスタを見てほしい。
このまるで「熱烈な宮本ファンを絵に描いたような姿=本人」から荷物を差し引き、上の服を「宮本夏の散歩T」に着替えさせ、ギターを持たせた姿が、当日のいでたちだ。そう、ハットはかぶったまま、パンツは白。
(ちなみにハットは途中脱ぎ、最後の方でまたかぶり直していた。きっと意味があるのだろう。わからんけど)
ざわざわざわざわ…。
一曲目は「俺たちの明日」。アコギでジャン。首をひねる。エレキでジャン。また首をひねる。再びアコギでジャン。さぁ頑張ろうぜー。
今まで生では見たことのない緊張感と神経の張りつめた感じ。ひとり会、この時点で猛烈だ。
モニターを気にしてか、険しい顔で手を左右に振ること数回。エコーもいらないんじゃないの?とピリピリとした感じで指示。
「今日は新曲をやるんで緊張しています」宣言の後、「まずはCMの曲にもなった、月桂冠の、going my wayを。going my wayは難しいぞー。」
もちろん合いの手の手拍子つき「Hi! Hi! Hi!」はセルフ。早速の盛り上がり。ライブ映えする。
次の解き放ては、「解き放つのは難しいぞー」と自前のMacをポチっと。これを押せば、的な感じで言ってから一回止めて再度ポチ。
とにかく基本歌がうまい方なので、歌いだしてしまえばこっちのもの的な盛り上がり。
新曲2曲連続、無事に終了。なんとなくこちらもホッと胸をなでおろす。
宮本「もっと知っている曲の方がいいですか?こんな感じでいいですか?」
宮本「とにかく53歳なので変な動きをすると、肺が…」
エビバデ「肺が?(ドキドキ)」
宮本「スッキリしました(笑顔)」
エビバデ「は?」
という謎の申告を受け、次の曲へ。
おなじみ「翳りゆく部屋」。
モニターを気にし、カメラを気にし、「(自分の)ギターが下手すぎる」と途中から完全にやりなおし、そのサビ部分で一緒に歌ってしまっていたお客さんにむかって「あんたの歌を聴きにきているんじゃないんだよ!」と注意。また最初の緊張感いっぱいの状況に。
しかしここからの持ち直しっぷりが凄かった。
やはりキーとなったのは「冬の花」。
石巻も凄まじかったが、オハラの冬の花はすこぶる狂気の大輪だった。
ギター一本であんなにも曲に表情が出るとは。恥ずかしながら涙が止まらなかった。
そしてまたもここでたたみかけるが如き「昇る太陽」。この連続技には完敗だ。圧巻。
記憶があいまいなのだが、おそらくここで
「すみませんでした!」という謝罪が始まったかと思う。
「(翳りゆく部屋で)ギターが上手く弾けなくて、人に八つ当たりをしてしまう悪い癖があるんですよね。(一緒に歌ってしまっていた人にむかって)すみませんでした。今度一緒に練習しよう(?)」
この辺になると、私自身の夏の疲れが異常な聞き取り違いをおこしていそうで不安なのだが、そんなようなことおっしゃった上で、完全に横を向いて翳りゆく部屋のギター練習が始まって、最後まで歌い切った気がする。(ちょっと時系列も歪んできた気がする。)
あぁ、きっと怒ってしまってから、歌っている間中、ずっと気にしていたのね。
なんかいい感じにいろいろ一段落したころに、実は本日一番私がヤラレた曲が登場。
高橋一生さんへの提供曲の「君に会いたい-Dance with you-」。
高橋一生氏を竹を割ったような性格と褒めたたえた後、しっかりイントロの「はぁー あああああ」から歌いだし。もうこの声だけで気絶するかと思った。
高橋一生CDを購入し、インスト(宮本コーラス入り)を聴きまくっていた私だが、こんなに早く本人がカバーしたものを聴けるとは思っていなかったので、もうドキドキ。
そのドキドキが倍速の早打ちになるほど、どえらい色気ムンムン(昭和)で歌われたもんだから、たまらない。
いや、コーラス時点で予想はしていたが、あれだな、人に作ったという「てい」だと、ここまで解放されて歌えるんだな。潜在能力の新たなる開花と言っても過言ではない。
今後ともバンバンこういう曲を人様に作ってください。そしてガンガンセルフカバーして下さい。お願いします。
オトナの魅力をも出し尽くしたあと、なんと最新曲、まだ発売してもいない「Do you remember?」をKen Yokoyamaのギターもなしに歌うという大サービス&大冒険。
これがまたかっこいい。1番だけだったけれど、これまた生育の良さそうな歌。映画館でぜひ聞きたい。
ソロ名義での持ち歌、大放出し尽くし(そりゃピリピリもするわ、とこの時点で合点がいく)ご本人も聞いていたこちら側も、何か同じミッションを一緒に果たしたかのような連帯感ののちの、エレカシ曲「笑顔の未来へ」「今宵の月のように」「悲しみの果て」の、良かったこと。
もう遮るものなど私たちの間にはない!安心感10割(完全に私感)くらいの感じ。
もちろん手拍子、ポケットに手を、でギターはぶらーん。口ドラムまで飛び出す全力っぷり。
ギターの音が途切れるたび、猪苗代湖に宮本さんの声が響き渡り、酒も入っていないのにオハラ☆ブレイクありがとー!と叫びそうになる俺。なんなら音叉ひとつで全部アカペラでもいけるんじゃなかろうか、と思ってしまう歌唱力。
そうそう、「小林武史さんに、宮本くんはギターが下手だからと言われまして。冬の花の時も、小林さんに自分のギター一曲分送って、実際の曲を聴いたら、一つも自分のギターが入ってませんでした。」という、ものすごい話をサラリとしていたな。
「また良い曲作って、オハラブレイクで披露します!だからみなさんも健康に留意して、また会おう!」
ラストは、舞台からはけることなしに「誰も何も言ってないけどアンコールやります!」と「風に吹かれて」。もちろんお手振りありで、ギターも揺れる。
最後は力強く「お尻出してブー!今度夢に出るぜ!」という謎の小学生のような捨て台詞を残して去っていった。豆台風か。
結果、心の底から来てよかったー!
宮本浩次が与えてくれる満足感って、いったいなんなんだろう。
オハラブレイク開催前日の突風に全てが飛ばされる映像をご覧になった方も多いと思います。二日間の開催、並大抵のことではなかったと思います。最高の夏の思い出をありがとうございました。
風景、食事、出演者、全てが優しくあたたかい。噂に違わぬ素晴らしいフェス。いっぺんで好きになりました。
「オハラ☆ブレイク'19夏」宮本浩次ソロ
俺たちの明日
going my way
解き放て、我らが新時代
翳りゆく部屋
昇る太陽
君に会いたい-Dance with you-
Do you remember?
笑顔の未来へ
今宵の月のように
悲しみの果て
風に吹かれて